リアリティ・イン・アドバタイジング 8章 数百万ドルの大失敗

 古代ギリシア神話には、すべての広告マンが特に覚えておくべき二つの神話がある。

 ひとつは首まで湖の中に浸かっているものの水が飲めずに喉が渇いて死にそうなタンタロスの話だ。水を飲もうと身をかがめると、水はそれに合わせて退いてしまう。

 もうひとつは巨石を山頂まで運ぼうとするシシフォスの話だ。石を山頂まで運びかけると、石はいつも最後には山の下まで転がり落ちていってしまう。

 このふたつの神話は、今日の広告ビジネスにおいても毎日再現されている。

 今日では衛生的で新鮮な水は豊富に供給され、それを飲むことも簡単だ。また、巨石を山の頂上まで簡単に運び上げることの出来る基礎的な工学技術も存在している。

 しかし、本書が教える、浸透率と引き寄せの原理の教えの中では、以下の教訓が最大級に重要だ。

 広告キャンペーンの頻繁すぎる変更は浸透率を破壊する。

 まさに「数百万ドルの大失敗」と言うべきものだろう。

 これは広告の世界では古くから言われ続けている原理のひとつであるものの、今日当たり前のように無視され続けている原理でもある。

 過去20年において、5回、10回、15回、または20回と、キャンペーンが変更されなかったブランドは今日実にわずかしか存在しない。

 「(キャンペーンの)ストーリーが古くなってしまった」と、メーカーの人間は言う。

 「消費者は、(ストーリーに)飽きてしまったに違いない」と、別の者も言う。

 「新しいストーリーは、我々のブランドに新たな消費者層を加えてくれるだろう」と、さらに別の者も自信満々に言う。

 キャンペーンの対象となる消費者の90%があなたのキャンペーンを記憶していないのであれば、ストーリーは間違いなくまだ古くなっていない。

 また、消費者の90%がキャンペーンを見たこともないというのであれば、彼らが飽きてしまったということはほとんどあり得ない。

 実際の数字を目の当たりにすることによって、ストーリーを変更することでキャンペーンを認知した人口を増やすどころか逆に減らすという事実を理解することになろう。

 広告主が年間200万ドルの予算を投じ、基本的なメッセージを変更しないで、かつ本書の後半に書かれている他の原則も併せて適切に活用すれば、大雑把に言って40%もの消費者にストーリーを刻みつけることが可能になる。

 また、担当の広告マンが本物のエキスパートならば、さらに良い結果を生ませることも可能だ。我々のクライアントにも、年間250万ドルの予算を投じ、70%もの浸透率を獲得した会社があった。つまり、10人中7人のアメリカ人がその会社の広告を知っているのだ。

 一方、年間1,000万ドルもの予算を投じながら、キャンペーンを変更し続けた結果、15%程度の浸透率しか確保できていない広告主も存在する。

 ここで、あるパッケージ製品のメーカーによる、頻繁すぎるキャンペーン変更という間違いを犯した事例を見てみよう。

 その会社の社長は、過去5年間において年間に500万ドルもの予算を使い続けていた。

 その会社は毎年、特定の人々から「才能豊か」と評価される新しいキャンペーンを展開し続けていた。当時、その会社はまったくバラバラの五つのキャンペーンを同時展開していた。

 浸透率についての我々の長年の調査結果は、単一の、変更されないキャンペーンは最低でも60%の浸透率をもたらすものであることを教えてくれている。つまり、10人中6人のアメリカ人がキャンペーンを記憶するのだ。

 しかし、同社は、わずか15%の浸透率しか得られなかった。つまり、本来得られるべき浸透率よりも75%も少ない数字しか得られなかったのだ。同社は、本来であれば625万ドルの予算で得られた浸透率に、2,500万ドルもの予算を費やしていたのだ。

 こういうことを平気で行う人は、自分で自分の木を切り倒しているようなものだ。

さらに、それらの木の中には若木のまま切り倒されているものもある。これから強く高く成長を始めようという矢先に切り倒されてしまう。

また、時として我々は広告ビジネスにおける最悪の無意味なケースを目撃する。新たに就任したある会社の役員達が、単に今展開されている広告キャンペーンに変化を加えたいという願望を満たすためだけに大いなる変更を加えようとしたりするのだ。

 この時点において、我々は次のような静かな反論を耳にすることになろう。

 「だが、キャンペーンが非常に高い浸透率を獲得出来た時点、例えばほとんどのアメリカ国民がそれを知っている状態になった時点では、そのキャンペーンはすでに陳腐化へのスタートを切ってしまったのではないのかね?」

 この反論に対する答えは「ノー」だ。浸透率についての我々の調査結果がそれを証明している。

 キャンペーンの陳腐化が始まったとした場合、通常は次の二つのうちのひとつが現実化する。浸透率が低下して消費者がメッセージへ反応しなくなるか、引き寄せ率が低下するかだ。

 しかし、我々は、キャンペーンを展開している製品そのものが急速に時代遅れになってしまった例外を除いて、未だかつてそのような事例を見たことがない。

 それどころか、通常ほとんどのキャンペーンは、太陽の陽を求めて枝を伸ばす木のように豊かに成長する。そして、年を重ねるごとに、豊かで実り多い種はしっかりと地中に根を下ろし、新しい売上と顧客とをもたらしてくれるようになる。

 ある歯磨き粉のキャンペーンは実に22年間も展開され、未だに市場ナンバーワンの地位を確保し続けている。

 競合ブランドによる膨大な攻撃にさらされ続けてきてもだ。

 また、あるパンのキャンペーンは16年間も展開され、その枝は未だに成長を続けている。

 あるマウスウォッシュのキャンペーンは21年間も展開されている。

 あるタバコのキャンペーンは11年間展開されている。

 また、あるデオドラント石鹸のキャンペーンは25年も展開されている。

 あるキャンディーのキャンペーン、比較的低予算で展開されている、は、7年間展開され、今日のアメリカ合衆国において最大の浸透率を誇るブランドのひとつとなっている。

 また、ある頭痛薬は20年間まったく同じキャンペーンメッセージを語り続けている。

 また、ある製薬会社、ひとつの製品だけをもって創業された会社、は、31年間まったく同じコピーを使い続けている。
 
 その他にも実例は豊富に存在する。

 以下に、我々の調査結果が教える広告の真理の大原則をお伝えしよう。

1.キャンペーンのメッセージを変更することは、浸透率を見た場合、広告予算をある日突然ゼロにするのとまったく同等の効果を及ぼす。

2.それゆえ、あなたの会社が毎年次々に新たな「素晴らしいキャンペーン」を展開し続けているのであれば、それほど「素晴らしくないキャンペーン」を展開しているがまったく同じキャンペーンメッセージを送り続けいるあなたのライバル会社に出し抜かれることになる。

3.キャンペーンを展開している製品そのものが時代遅れにならない限り、優れたキャンペーン自体が時代遅れになるということは決してない。

 だから、あなたの木の枝を太陽の陽へ向けて成長させるのだ。広告の林の雑木を取り払い、成長の機会を与えるのだ。そうすればあなたはどんなに激しい嵐にも微動だにしない、地に深く根を下ろす巨木を手に入れることになろう。

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リアリティ・イン・アドバタイジング 8章 数百万ドルの大失敗 への2件のコメント

  1. 樋口正人 より:

    なるほど!
    時を経ても陳腐化せず、メッセージを伝え続けられるキャッチコピーなりストーリー性を考えて気長に頑張ります(ちょっと違うかな?)

  2. admin より:

    樋口さん、コメントありがとうございます。

    もう少しするとUSPの話が出てきます。USPを確立した上で優れたコピーやストーリーを生み出し、それを繰り返し使い続ける。そんなイメージです。

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